旅する写心 〜Win or Lose

プロ池田勇太とアマチュア金谷拓実の
一騎打ちとなった日本オープン最終日。
前半のうちに金谷が1打差まで迫り
バックナインの争いは熾烈を極めた。

攻める池田に対し、徹底的に刻む金谷。
15番ホールパー5、
その時点で3打リードの池田は
第一打を大きく右に曲げた。
金谷はナイスショット。
次の暫定球、池田は逆に左へ大きく曲げ、
顔色が一瞬にして変わった。
第一打は微妙な位置だったが
一目散で暫定球の方へと向かう。
きっちりフェアウェイに出し
池田は5打目に賭けた。
一方の金谷は
フェアウェイど真ん中から
迷わずレイアップを選んだ。

ファインダーをのぞきながら、
一瞬あれっ?と感じた。

結果的には池田がボギー、
金谷がバーディで1打差に迫った
ホールだった。
しかしここで果敢に2オンを狙っていたら
池田を追い込んでいたのでは?と思う。
勝つか、負けるか、
流れが変わる瞬間だったように見えた。

初代大会王者の赤星六郎以来となる
アマチュア優勝のチャンスだった。
ミスショットでも、スーパーショットでもない。
一打の背景、選手にしかわからない心模様が
風となってすうっと吹きぬけた。

宮本 卓Taku Miyamoto

1957年、和歌山県生まれ。神奈川大学を経てアサヒゴルフ写真部入社。84年に独立し、フリーのゴルフカメラマンになる。87年より海外に活動の拠点を移し、メジャー大会取材だけでも100試合を数える。世界のゴルフ場の撮影にも力を入れており、2002年からPebble Beach Golf Links、2010年よりRiviera Country Club、2013年より我孫子ゴルフ倶楽部でそれぞれライセンス・フォトグラファーを務める。また、写真集に「美しきゴルフコースへの旅」「Dream of Riviera」、作家・伊集院静氏との共著で「夢のゴルフコースへ」シリーズ(小学館文庫)などがある。全米ゴルフ記者協会会員、世界ゴルフ殿堂選考委員。

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