旅する写心 〜「コース巡礼」13.カウリ・クリフ 8番ホール

中原中也の詩の一節に
「思えば遠くに来たもんだ」
というのがある。
ゴルフ場を巡る旅をしていると
本当にそう思う時がある。

今回訪れたカウリ・クリフも
そんなところだった。
ニュージーランド・オークランドから
北西に4時間は車を走らせただろうか。
1枚のゴルフ場の看板がやっと出てきた。
しかし脇道に入ってから、
何度も不安がよぎった。
「こんなところにゴルフ場があるのだろうか」

海に近づいていることだけは確かだった。
そして人気のないゲートと
壊れたようなインターフォンがあった。
予約があることを告げるとゲートは開いた。
そこからまた舗装されていない道を
5分ほど走らされた。
どこまで焦らすのか。
海が見えたと思った瞬間、
瀟洒なクラブハウスが現れた。

中に入ると受け付けをするでもなく
すぐさまウエルカム・シャンペンが渡された。
「こちらにどうぞ」とテラスに案内された。
眼下には、まもなく日が沈む
ゴルフ場と海が広がった。
「思えば遠くに来たもんだ」
キリッと冷えたシャンペンを呑む。
最高の旅になりそうだ。

Kauri Cliffs
ニュージーランド マタウリベイ
8th hole 494yards Par5

宮本 卓Taku Miyamoto

1957年、和歌山県生まれ。神奈川大学を経てアサヒゴルフ写真部入社。84年に独立し、フリーのゴルフカメラマンになる。87年より海外に活動の拠点を移し、メジャー大会取材だけでも100試合を数える。世界のゴルフ場の撮影にも力を入れており、2002年からPebble Beach Golf Links、2010年よりRiviera Country Club、2013年より我孫子ゴルフ倶楽部でそれぞれライセンス・フォトグラファーを務める。また、写真集に「美しきゴルフコースへの旅」「Dream of Riviera」、作家・伊集院静氏との共著で「夢のゴルフコースへ」シリーズ(小学館文庫)などがある。全米ゴルフ記者協会会員、世界ゴルフ殿堂選考委員。

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