旅する写心 〜「My Sweet Masters」21.Again

セベに憧れてゴルフを始めた
セルヒオ・ガルシア。
いつかは自分も
マスターズで勝ちたい、
と思ってプロになった。

2017年マスターズの最終日は、
郷土スペインの英雄が生きていれば
60回目にあたる誕生日だった。
ガルシアの思いは痛いほど
ファインダー越しに伝わってきた。
気がつけばもう37歳、
メジャーで優勝争いする回数も
これから先は少なくなっていくだろう。
このチャンスは最後かもしれない。

勝負を決するバックナイン。
10番、11番とボギーが続き
ガルシアの夢はまたも潰えるのかと思ったが、
12番のティグランドで見た
その目はまだ光を失っていなかった。
そこから死闘が始まった。
メジャーで勝つ。
あの時セベと誓い合った約束。
14番からは見違えるような
ショットが続いた。
セベの燃えるようなプレーが
乗り移ったかのようだった。

あの日の二人の笑顔を思い出した。
2000年、プロ転向直後のガルシアを
嬉しそうに紹介してくれた時の一枚だ。
セベと同じ年の私は今年還暦を迎える。
旅を続けること、その喜びを
オーガスタでいま一度噛みしめている。

宮本 卓Taku Miyamoto

1957年、和歌山県生まれ。神奈川大学を経てアサヒゴルフ写真部入社。84年に独立し、フリーのゴルフカメラマンになる。87年より海外に活動の拠点を移し、メジャー大会取材だけでも100試合を数える。世界のゴルフ場の撮影にも力を入れており、2002年からPebble Beach Golf Links、2010年よりRiviera Country Club、2013年より我孫子ゴルフ倶楽部でそれぞれライセンス・フォトグラファーを務める。また、写真集に「美しきゴルフコースへの旅」「Dream of Riviera」、作家・伊集院静氏との共著で「夢のゴルフコースへ」シリーズ(小学館文庫)などがある。全米ゴルフ記者協会会員、世界ゴルフ殿堂選考委員。

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