旅する写心 〜「全米オープンの記憶」1999年 ペイン・スチュアートの悲劇

ニッカポッカを履いた伊達男
ペイン・スチュアートは
1989年全米プロ、91年全米オープン優勝と
順調にキャリアを積んでいった。

しかしその後、低迷の時期が続いた。
98年、オリンピッククラブで行われた
全米オープンで久しぶりの優勝争いをしたが
最後はリー・ジャンセンに逆転負けを喫した。

そして99年を迎える。
歴史あるパイン・ハーストNo.2で行われた
最初の全米オープン。どんな大会になるのか
ワクワクしながら撮影していた。
スコアが伸びない展開の中
フィルとタイガーを抑えてペインが
2度目の優勝を飾った。

この大会で僕は初めてリモコンカメラを使い
クラブハウスの屋上から18番の全景を撮った。
まさかこんな歴史的写真になるとは、、、

その年の最終戦「ツアー選手権」へ向かう途中
乗っていたプライベートジェットの事故で
ペインはこの世を去った。42歳だった。

18番で5mの難しいパーパットを決め
誇らしげに拳を突き上げたシーンは
頭に焼き付き、何度でも鮮明に思い出せる。

セベと同じくペインも
同じ年齢の僕にとって英雄だった。
99年の全米オープンの記憶は
いまも切ない。

宮本 卓Taku Miyamoto

1957年、和歌山県生まれ。神奈川大学を経てアサヒゴルフ写真部入社。84年に独立し、フリーのゴルフカメラマンになる。87年より海外に活動の拠点を移し、メジャー大会取材だけでも100試合を数える。世界のゴルフ場の撮影にも力を入れており、2002年からPebble Beach Golf Links、2010年よりRiviera Country Club、2013年より我孫子ゴルフ倶楽部でそれぞれライセンス・フォトグラファーを務める。また、写真集に「美しきゴルフコースへの旅」「Dream of Riviera」、作家・伊集院静氏との共著で「夢のゴルフコースへ」シリーズ(小学館文庫)などがある。全米ゴルフ記者協会会員、世界ゴルフ殿堂選考委員。

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