旅する写心 〜Dreams Come True

夕闇迫るワイアラエの練習場で
小平がひとり黙々と球を打っていた。
静寂に響く打球音。
何かに悔しさをぶつけているような
そんな音に聞こえた。

2017年末のワールドランキングで
1つ順位が足りずに
マスターズ出場の権利を逃した。
その直後のハワイだった。
練習場で軽い挨拶を交わしたが、
普段から言葉少ない小平が
さらに少なくなっていた。
秘めた闘志を漏らさぬよう--
そう感じさせる寡黙さだった。

それからアジア、アメリカを転戦し
自力でマスターズ出場を勝ち取った。
オーガスタで再会した小平の
嬉しそうな顔が忘れられない。
本番でも自信がみなぎっていた。
厳しいピンポジにも臆することなく
いま持てる自分の力をぶつけた。
マスターズの4日間をプレーした後、
晴れやかな顔を見せていた。
「来週ヒルトンヘッドに出ます」
頑張れよと一言残し僕は帰国した。

時差ボケの中、
小平の成績を毎日チェックしていた。
2日目にその日の最少スコア
「63」を叩き出した。
PGAツアーのセッティングで
「63」は簡単に出るものではない。
紛うことなき実力だろう。
そして、念願は晴れて実を結んだ。
プロになる前にLAで出会った時
熱く語っていた、
いつかPGAツアーで戦いたいと。
Dreams Come True !!
おめでとう、智。

Waialae Country Club
ハワイ州ホノルル

宮本 卓Taku Miyamoto

1957年、和歌山県生まれ。神奈川大学を経てアサヒゴルフ写真部入社。84年に独立し、フリーのゴルフカメラマンになる。87年より海外に活動の拠点を移し、メジャー大会取材だけでも100試合を数える。世界のゴルフ場の撮影にも力を入れており、2002年からPebble Beach Golf Links、2010年よりRiviera Country Club、2013年より我孫子ゴルフ倶楽部でそれぞれライセンス・フォトグラファーを務める。また、写真集に「美しきゴルフコースへの旅」「Dream of Riviera」、作家・伊集院静氏との共著で「夢のゴルフコースへ」シリーズ(小学館文庫)などがある。全米ゴルフ記者協会会員、世界ゴルフ殿堂選考委員。

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