旅する写心 〜It’s not too late

今回のフィル・ミケルソンの事件は
色々なことを考えさせられる。
ルール違反を知りながら
ペナルティ覚悟でボールを止めた行為。
これが許されるならば
ゴルフが成り立たなくなるかもしれない。

1921年ボビー・ジョーンズが
全英オープンに初挑戦した
セントアンドリュースでの逸話を思い起こす。
アウト「46」を叩き、インに入り10番でダボ。
迎えた11番はグリーン手前に
大きなバンカーがある有名なパー3。
バンカーからのショットを2度ミスし
ダブルボギーのパットを
打たないでボールを拾い上げた。
そしてスコアーカード破り捨て
棄権してしまった。
当然スコットランドでは批判の嵐。
その行為はジョーンズの試練となった。

5年後の26年全英オープン
ジョーンズは悲願の初制覇を果たした。
そして翌27年のセントアンドリュースでの
全英オープンも連覇。
30年にはついに歴史上初めて
年間グランドスラムを達成した。
時は流れ1958年、
脊椎の病気で車椅子姿となり
世界アマのキャプテンとして
再び聖地を訪れたジョーンズに
セントアンドリュース市は
名誉市民の称号を与えた。
ジョーンズは喜びの涙を浮かべ
「セントアンドリュースが私に
教えてくれたものは計り知れない。
あの時の経験がなければ私の成功はなかった」
と語ったという。

過ちをどのように次に繋げていくか。
フィルの今後のゴルフ人生を
見守っていきたい。

Shinnecock Hills Golf Club
ニューヨーク州ロングアイランド島

宮本 卓Taku Miyamoto

1957年、和歌山県生まれ。神奈川大学を経てアサヒゴルフ写真部入社。84年に独立し、フリーのゴルフカメラマンになる。87年より海外に活動の拠点を移し、メジャー大会取材だけでも100試合を数える。世界のゴルフ場の撮影にも力を入れており、2002年からPebble Beach Golf Links、2010年よりRiviera Country Club、2013年より我孫子ゴルフ倶楽部でそれぞれライセンス・フォトグラファーを務める。また、写真集に「美しきゴルフコースへの旅」「Dream of Riviera」、作家・伊集院静氏との共著で「夢のゴルフコースへ」シリーズ(小学館文庫)などがある。全米ゴルフ記者協会会員、世界ゴルフ殿堂選考委員。

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