旅する写心 〜Final Stage

長いゴルフ人生、
最後の優勝がどこになるかは
わからない。
しかし本人にはきっと
なんとなく感じるものがある。

丸山茂樹はPGAツアーを撤退した後、
ジワジワと体力の限界を感じながら
日本の試合に出ていた。
2009年12月の「日本シリーズ」
思ってもないチャンスが訪れた。
持てる力を振り絞る。
これが最後なのかもしれない。
心のどこかでそう思いながら。

金庚泰とのプレーオフ勝負となった。
舞台は東京よみうりCCの名物18番パー3。
3ホールを終えても決着がつかない。
冷気が一気にグリーンを包んだ。
4ホール目、
丸山がウィニングパットを沈めた瞬間、
スタジアム状のホールは地響きを鳴らした。
丸山の目から涙が溢れる。
何度も丸山の優勝を見てきたが
涙は初めてだった。

長く同じプレーヤーを撮り続けてきて、
最後の優勝が撮れたことは
幸運というほかない。
東京よみうりの18番を見るたびに思い出す。
丸山との旅はハッピーエンドだった、と。

宮本 卓Taku Miyamoto

1957年、和歌山県生まれ。神奈川大学を経てアサヒゴルフ写真部入社。84年に独立し、フリーのゴルフカメラマンになる。87年より海外に活動の拠点を移し、メジャー大会取材だけでも100試合を数える。世界のゴルフ場の撮影にも力を入れており、2002年からPebble Beach Golf Links、2010年よりRiviera Country Club、2013年より我孫子ゴルフ倶楽部でそれぞれライセンス・フォトグラファーを務める。また、写真集に「美しきゴルフコースへの旅」「Dream of Riviera」、作家・伊集院静氏との共著で「夢のゴルフコースへ」シリーズ(小学館文庫)などがある。全米ゴルフ記者協会会員、世界ゴルフ殿堂選考委員。

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