旅する写心 〜It Don’t Mean A Thing

1番ティグラウンドで
バースデーソングに迎えられ
ハニカミながら岡本綾子は登場した。
歌うのはギャラリー。
この大会では恒例行事となっていて
地元のファンもそれを楽しんでいた。

女子メジャーの第1戦が行われる
ミッションヒルズCCは岡本本人も家を持つ
大好きなコースだ。
シーズン開幕前から時間をかけて
パームスプリングスに滞在して調整し、
ツアーに挑むのが岡本のスタイルだった。
そんな自分の庭のようなコースだったが
成績はというとなぜかさっぱりだった。
他のメジャーでは幾度となく
優勝争いを繰り広げられてきたのに--
彼女にはそういうある種の不思議さがあった。

競技こそ違うが、
米大リーグで大きな足跡を残して
先日引退したイチローは、
どこか岡本を彷彿とさせる選手だった。
実際、幼少時代に指導したお父さんは、
打球方向の足に美しい軸を作る
岡本のスウィングからヒントを得ていた
と聞いたことがある。
メジャーリーグデビュー直後には
そのスウィングが注目を浴び、
「打つ前に走ってる」とか
「サムライ打法」とか言われた。

昔と比べ、野球もゴルフも
個性あふれるスウィングの選手は
希少になっている。
二人に共通するスウィングのリズム感には
どんなピッチャーでも、どんなコースでも
対応できる強靭なものを感じたものだが。
個性を貫く選手の覚悟、と同時に
個性あふれる選手を受け入れる
そういう世界観が必要な気がする。

Mission Hills Country Club
カリフォルニア州 ランチョ・ミラージュ

宮本 卓Taku Miyamoto

1957年、和歌山県生まれ。神奈川大学を経てアサヒゴルフ写真部入社。84年に独立し、フリーのゴルフカメラマンになる。87年より海外に活動の拠点を移し、メジャー大会取材だけでも100試合を数える。世界のゴルフ場の撮影にも力を入れており、2002年からPebble Beach Golf Links、2010年よりRiviera Country Club、2013年より我孫子ゴルフ倶楽部でそれぞれライセンス・フォトグラファーを務める。また、写真集に「美しきゴルフコースへの旅」「Dream of Riviera」、作家・伊集院静氏との共著で「夢のゴルフコースへ」シリーズ(小学館文庫)などがある。全米ゴルフ記者協会会員、世界ゴルフ殿堂選考委員。

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