旅する写心 〜New York State of Mind

2002年ニューヨークは前年のテロの
後遺症がまだ冷めやらぬままだった。
初めてメジャーの開催地に選ばれた
ベスページ・ブラックコースは
市民が気楽にゴルフできる場所として
親しまれてきたところだ。

全米オープンはそれまで名門コースで
開催されることがほとんどだったが
西海岸でのペブルビーチの成功をみて
USGAは東海岸のパブリックで
開催できるコースを探していた。
1999年にパインハーストで開催。
それに続くニューヨーク近郊のベスページも
USGAにとっては一つの賭けだった。
そして開催準備の最中だった2001年9月
テロがニューヨークを襲った。

市民の心は閉じたままだった。
このベスページでの気分転換を
日常としていたゴルフ好きの消防士たちが
数多く命を失ったという。
大会が成功するか不安視された。
しかし蓋を開けてみると
ミケルソン、ガルシアを抑えて
タイガーが優勝という展開で
大会史上最高のギャラリーが会場に集まった。

ニューヨークの市民が愛する
パブリックコースで大成功を収めたことが
歴史的な転換点となったことは
この後の全米オープン開催コースを見ても
明らかだろう。
今週いよいよこのベスページで
「全米プロ」が開催される。

Bethpage State Park Golf Course (Black)
ニューヨーク州 ファーミングデール

宮本 卓Taku Miyamoto

1957年、和歌山県生まれ。神奈川大学を経てアサヒゴルフ写真部入社。84年に独立し、フリーのゴルフカメラマンになる。87年より海外に活動の拠点を移し、メジャー大会取材だけでも100試合を数える。世界のゴルフ場の撮影にも力を入れており、2002年からPebble Beach Golf Links、2010年よりRiviera Country Club、2013年より我孫子ゴルフ倶楽部でそれぞれライセンス・フォトグラファーを務める。また、写真集に「美しきゴルフコースへの旅」「Dream of Riviera」、作家・伊集院静氏との共著で「夢のゴルフコースへ」シリーズ(小学館文庫)などがある。全米ゴルフ記者協会会員、世界ゴルフ殿堂選考委員。

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