旅する写心 〜Slow and steady wins the race

華々しくデビューした石川遼が
プロ転向直後に掲げたのは
「急がば回るな!!」
という造語だった。
ハードルを乗り越えて走り続け
ことし28歳になる。

2013年から米PGAtourに挑戦し
心破れて17年に帰国。
大観衆の中でプレーしていた日本と違い
誰もいない裏街道をプレーする辛酸も舐めた。
今季はツアー開幕から腰痛に悩まされ
かつて「58」を記録した大会
自身初の棄権という経験を味わった。
しかし彼はいつも
現実から逃げることはしなかった。
目の前のものと向き合い、
自分の力、自分の責任で答えを見つけていく。
悩み、考え、また挫折にぶつかる。
そのため、時間は必要だった。

決して無駄ではない。
むしろ彼にとっては大切なビタミン剤。
この夏、日本プロで見事に逆転優勝し、
そしてセガサミーカップでは
初日からトップを走り
自身初となる2戦連続優勝を果たした。
どん底まで下がったワールドランキング
100位圏内が見えてきた。
10月末に日本で初開催される
ZOZOチャンピオンシップ出場も決まり、
いよいよ新生・石川遼のスタートだ。
回り道は、確実に彼を強くした。

宮本 卓Taku Miyamoto

1957年、和歌山県生まれ。神奈川大学を経てアサヒゴルフ写真部入社。84年に独立し、フリーのゴルフカメラマンになる。87年より海外に活動の拠点を移し、メジャー大会取材だけでも100試合を数える。世界のゴルフ場の撮影にも力を入れており、2002年からPebble Beach Golf Links、2010年よりRiviera Country Club、2013年より我孫子ゴルフ倶楽部でそれぞれライセンス・フォトグラファーを務める。また、写真集に「美しきゴルフコースへの旅」「Dream of Riviera」、作家・伊集院静氏との共著で「夢のゴルフコースへ」シリーズ(小学館文庫)などがある。全米ゴルフ記者協会会員、世界ゴルフ殿堂選考委員。

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