旅する写心 〜「コース巡礼」37.ウィングドフット 18番ホール

開催が危ぶまれた今年の全米オープンは
ニューヨーク郊外の
ウィングドフットで行われる。
難コースで知られるウィングドフットは
ティリングハストの代表作であり、
超名門としての風格も格別である。

僕は1997年の全米プロと
2006年の全米オープンに加え、
その両大会の前年にコース撮影に訪れた。
試合の時とは違い
ひっそりとしたクラブハウスのドアを
開ける瞬間の緊張は今でも残っている。

協会から預かった撮影許可の手紙を握り締め、
ヘッドプロを訪ねた。
重厚な応接室で何分待っただろうか。
ようやくヘッドプロが現れ
このクラブの歴史を
滔々(とうとう)と語り始めた。
ウィングドフットで29年に
初めて行われた全米オープンでは
ボビー・ジョーンズが3度目の優勝。
簡単には撮影させてくれない。
まずは“お勉強”からなのだ。

大会の賑やかな雰囲気のコースと
普段の名門コースは雲泥の差だ。
やっと撮影の許可は下りたが、
条件は歩いての撮影だった。
仕方なく重い三脚とカメラを持って
コースに出かけた。

途中でプレーヤーに出会ったのは2組のみ。
ほぼ貸し切りの状態で
初秋のコースを堪能した。
ティリングハストの特徴的なグリーンは
プレーをしなくとも恐怖が伝わってくる。
97年の虹がかかった瞬間のD.ラブⅢの初優勝
06年のミケルソンの最終ホールのダブルボギー
つい先日の事のように思い浮かぶ。

Winged Foot Golf Club
ウィングドフット ゴルフクラブ

宮本 卓Taku Miyamoto

1957年、和歌山県生まれ。神奈川大学を経てアサヒゴルフ写真部入社。84年に独立し、フリーのゴルフカメラマンになる。87年より海外に活動の拠点を移し、メジャー大会取材だけでも100試合を数える。世界のゴルフ場の撮影にも力を入れており、2002年からPebble Beach Golf Links、2010年よりRiviera Country Club、2013年より我孫子ゴルフ倶楽部でそれぞれライセンス・フォトグラファーを務める。また、写真集に「美しきゴルフコースへの旅」「Dream of Riviera」、作家・伊集院静氏との共著で「夢のゴルフコースへ」シリーズ(小学館文庫)などがある。全米ゴルフ記者協会会員、世界ゴルフ殿堂選考委員。

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